きょうだいが親とサービスプロバイダーに知っておいて欲しいこと

著作権:きょうだい支援プロジェクト
著作権所有/2002年6月18日
翻訳:きょうだい支援の会&金子久子/2002年9月30日
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アメリカ合衆国には、健康上、発達上、あるいは精神的に問題を抱えている人が600万人以上いる。これらの人々のほとんどに、"健常の"きょうだいがいる。きょうだいは、次にあげる理由からだけでも、あまりに重要で見過ごすことはできない。
*きょうだいは、誰よりも長く特別なニーズのある家族員と人生を共にする。親が亡くなり、特殊教育のサービスが遠い思い出になった後も、きょうだいはそこにいる。支援と情報が提供されれば、きょうだいは兄弟姉妹が幼児期から老年期まで尊厳のある人生を送るのを手助けできる。

*一生を通じて、きょうだいは特別なニーズのある子どもの親が経験する不安や問題の多くを同じように経験する。孤独、情報の必要、罪悪感、将来に対する不安、介護負担などである。
 きょうだいはまた、きょうだいに特有の問題にも直面する。憤慨(恨み)、同世代の人との問題、当惑(恥ずかしさ)、よい成績をとらなければというプレッシャーなどである。特別なニーズのある兄弟姉妹の人生において、きょうだいは重要で一生続く役割を担うにも拘らず、家族支援を謳っている機関でさえ、きょうだいを見過ごすことが多い。きょうだいは、サービス提供システムの文字どおりのあるいは比喩的な意味での待合室にたびたび取り残されているが、もっとよい待遇を受ける価値がある。本物の「家族支援」機関の配慮とサービスは、きょうだいが「家族」の定義に含まれたときに成功するだろう。

 きょうだい支援プロジェクトは、シブネット(プロジェクトが主宰する障害がある人たちの大人になっているきょうだいのためのメーリングリスト)で、きょうだいが、親、他の家族員、サービス・プロバイダーに考えて欲しいと思うことに関して、議論をリードした。

 下記は、シブネットのメンバーによって議論されたテーマときょうだい支援 プロジェクトが勧める事柄である。


  1. 自分自身の人生をもつ権利。
  2.  一生を通してきょうだいは、特別なニーズのある兄弟姉妹の人生で、多くの異なった役割を担うだろう。きょうだいが兄弟姉妹の世話に貢献するかどうかに関係なく、きょうだい自身の人生への基本的権利は、常に記憶されていなければならない。率直でオープンな議論なしに、親とサービス・プロバイダーは、"健常の"きょうだいが担う責任について、決めてかかってはならない。「私たち抜きに私たちのことは決められない(障害者の自己擁護において人気のあるフレーズ)」はきょうだいにも同じように当てはまる。自己決定は、結局のところ、きょうだいを含む誰のためにでもあるのだ。

  3. きょうだいの不安に気づくこと。
  4.  親と同じように、きょうだいは、兄弟姉妹の特別なニーズの影響に対して、広い範囲の感情−しばしば相反する感情をもつ。これらの感情は、親、他の家族員、サービス・プロバイダーによって予測され、認識されなければならない。ほとんどのきょうだいが、障害のある家族員と最も長い関係をもつので、これらの不安は時とともに変わる。親とプロバイダーは、きょうだいの一生続く、そして常に変化する不安についてもっと学ぶべきである。

  5. "健常の"きょうだいへの期待。
  6. 家族は、子どもたち全員に対して高い期待をする必要がある。しかし、"健常の"きょうだいの中には、非現実的な高い期待を自ら設定して、兄弟姉妹の障害に反応する者もいる。そして、兄弟姉妹の特別なニーズを何とかして補償しなければならないと感じる者もいる。親は、何を期待するかはっきり伝え、無条件に支援することで、"健常の"子どもたちを手助けることができるだろう。

  7. "健常の"きょうだいの普通の行動を予測すること。
  8.  親が見張っているのは難しいが、からかい、悪口、ケンカ、そして他の形の争いは、ほとんどのきょうだいの間で普通のことである−きょうだいの一人に特別なニーズがある場合でさえも。親はきょうだい同士の無情さににぞっとするかもしれないが、こうした争いの多くは、通常の社会的成長のために有益な部分でありうる。ときどきケンカをするきょうだいと一緒に育つダウン症の子どもは、おそらく一人っ子として育つダウン症の子どもより、大人として地域での生活に向かい合う準備ができている。どれくらい適応可能か、どれくらい発達上適切かに拘らず、きょうだいの一人に健康上または発達上の特別なニーズがあるとき、典型的なきょうだい間の争いは、("健常のきょうだいにとっては")罪悪感として終わりがちである。争いが起こると、多くのきょうだいに送られるメッセージは、「やめなさい。あなたのほうが大きいんだし、強いんだし、もっとものごとをわかっていなければいけません。あなたが歩み寄るべきよ。」というものである。"健常の"きょうだいは、ほかの子どもたちと同じように、ときには粗相をし、きょうだいに対して怒り、きょうだいとケンカをして当然なのである。


  9. 特別なニーズのある子ども(家族員)への期待。
  10. 家族が特別なニーズのある子どもに高い期待をすれば、みんなのためになる。 大人になって、"健常の"きょうだいは、障害のある兄弟姉妹の人生において、 重要な役割を演ずることだろう。親は、特別なニーズのある子どもたちが大人 としてできるだけ独立できるように、技術の習得をいま手助けすることによっ て、きょうだいを助けることができる。可能な範囲で、親は"健常の"子どもに やらせるのと同じように、家事や自己責任に関して特別なニーズのある子ども にも期待しなければならない。同じように期待をすることは、独立を促すだけ でなく、2種類のルールがあった−きょうだいのためのものと特別なニーズの ある兄弟姉妹のためのもの−ときょうだいが表明している憤慨(恨み)を最小 にする。

  11. 安全な環境に対する権利。
  12.  きょうだいのなかには、行動障害のある兄弟姉妹と暮らしている者もいる。 また、すべての関係者が傷つきやすい状況において、自分の年齢のレベルや立 場を超えて、自分のことや兄弟姉妹のことに責任を負うきょうだいもいる。特 別なニーズのある家族員が重要なのと同じくらい、きょうだいも自分自身の個 人的な安全を得るに値する。

  13. 同じ立場の人と出会う機会。
  14.  ほとんどの親にとって、同じ立場の親から助けを借りず、特別なニーズのあ る子どもを育てることを「一人でやる」などとは想像もつかないことだ。しか し、これはごく普通にきょうだいには起こる。シブショップ、メーリングリス ト(たとえばシブネットとシブキッズ)、そして同様の活動が提供するのは、 親が親の会のプログラムや同様のプログラムから得るのと同じ意味の支援と確 証である。親と同じように、きょうだいに特有の喜びや悩みをもっているのは、 自分一人でないと伝えるものである。

  15. 情報を得る機会。
  16.  一生を通じて、きょうだいは、兄弟姉妹の障害、その治療法、それに伴う様 々なことに関する情報を−それは絶えず変化するものであるが−必要とする。 親とサービス・プロバイダーには、積極的にきょうだいに役立つ情報を提供す る義務がある。特定の障害や病気について、親や他の大人のための資料を提供 している機関はどこでも、きょうだいと若い人たちのための資料も提供しなけ ればならない。

  17. 将来に対するきょうだいの不安。
  18.  人生の早い時期から、きょうだいの多くは、来る日々に自分は兄弟姉妹に対 してどんな義務を持つのだろうと心配している。親は次のような方法で、"健 常の"子どもを安心させることができる。特別なニーズのある子どもの将来設 計をする。その計画を立てるときには、"健常の"子どもも関わらせ、かれらの 意見も聞く。予備の計画も考える。大人としてどれだけ兄弟姉妹に関わるかに 対するきょうだいの態度は、時間とともに変化しうることを理解する。きょう だいが「輪に迎え入れられ」、自らの夢を追うことを親が賛成してくれると早 くから知れば、将来の兄弟姉妹との関わりは、義務的なものでなく選択の結果 になるだろう。自分自身の幸福と障害のある兄弟姉妹の幸福のために、きょう だいは自分自身の人生に対する権利を与えられなければならない。これには、 大人として障害のある兄弟姉妹の人生に関わるかどうか、どのように関わるか、 どの程度か、どういう形でか、どれぐらいの期間かということに関する発言権 も含む。



  19. 息子と娘の両方を関わらせること。
  20.  通常、娘が老いていく親の世話をする家族員であるのと同じように、親がも はや特別なニーズのある家族員の世話をすることができなくなったときに、そ の世話をする家族員も通常、娘である。しかし、男きょうだいを含めたきょう だい間で、その責任を分配することができないかどうか真剣に探るべきである。

  21. コミュニケーション。
  22.  親子の間で十分なコミュニケーションをはかることは、特別なニーズのある 子どもをもつ家族では特に大切である。夜間講座で「積極的傾聴」を学べば、 家族の皆とのコミュニケーションを高めるのに役立つ。また『子どもが聴いて くれる話し方と子どもが話してくれる聴き方』(*1)や『憎しみの残らないき ょうだいゲンカの対処法―子どもを育てる心理学』(*2)(どちらもアデル・ フェイバとエレイン・マズリッシュ共著)などの書物からは、子どもとコミュ ニケーションをはかるのに役立つアドバイスが得られる。
    *1『子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方』
     アデル・フェイバ&エレイン・マズリッシュ 著
     三津乃リーディ&中野早苗 翻訳
     1995.10.4初版発行 1996.11.18第2刷発行
     きこ書房
    
    原書:How to Talk So Kids Will Listen & Listen So Kids Will Talk
     Adele Faber (著), Elaine Mazlish (著)
     U.S. 定価: $13.00 円相当額: ¥1,557
     ペーパーバック - 304 p / Anniversary 版 (1999/08) 
     Avon Books ; ISBN: 0380811960 ; サイズ(cm): 20 x 13 
    
    *2『憎しみの残らないきょうだいゲンカの対処法―子どもを育てる心理学』
     アデル・フェイバ&エレイン・マズリッシュ 著
     三津乃 リーディ 翻訳
     価格:¥1,400 単行本 - 310 p 
     きこ書房 ; ISBN: 4877715029 ; サイズ(cm): 19
    
    原書:Siblings Without Rivalry: How to Help Your Children Live Together
     So You Can Live Too
     Adele Faber (著), Elaine Mazlish (著)
     U.S. 定価: $13.00 円相当額: ¥1,557
     ペーパーバック - 272 p / Expanded 版 (1998/02) 
     Avon Books ; ISBN: 0380799006 ; サイズ(cm): 20 x 13 
    
    
  23. 親と一緒の一対一の時間。
  24.  自分が一人の人間として大切にされているということを、親のふるまいや言 葉から感じることが子どもには必要である。"健常の"子どもと行きつけのハン バーガショップでハンバーガーをほおばったり、商店街でウィンドウショッピ ングするなど、親が忙しいスケジュールをやりくりすれば、親はその子のため にも「存在している」というメッセージが伝わり、広範囲にわたる話題につい て話すよい機会にもなるだろう。

  25. どの子についても、その子が達成したこと、人生の重要なできごとを祝うこと。
  26.  特別なニーズのある子どもを置いて出かけられないので、親が高校の卒業式 に来なかったきょうだいに−総代であったときでさえも−数多く出会った。障 害のある兄弟姉妹のニーズのために、結婚式の計画をどうするかを指図された きょうだいたちにも出会った。ひとりの子どもの特別なニーズが、他の子ども の達成したことや人生の重要なできごとを覆い隠してはならない。レスパイト サービスを探し、融通を利かせようと努力し、創造的な解決策を求めれば、そ の家族は、すべての家族員の達成を祝うことを確実にできるだろう。

  27. 親の考え方は、実際の障害より重要である。
  28.  親が子どもの障害をどう捉えているかのほうが、実際の障害より、"健常の" きょうだいが適応するかどうかに大きな影響を与えるということを親は覚えて おくべきである。親が自ら、支援、情報、レスパイトを求めるとき、"健常の" 子どもたちにとって、困難な状況にうまく適応する能力、健全な態度、行動の モデルとなる。

  29. 「家族」という定義にきょうだいを含むこと。
  30.  教育機関、保健医療機関、社会福祉事業機関の多くが、家族のためのサービ スを提供したいと明言するが、特別なニーズのある人と最も長い関係をもつ家 族員であるきょうだいを見過ごし続けている。きょうだいが受けるべき考慮と サービスをきょうだいに提供するとき、関係機関は「親」のためではなく「家 族」のためのサービスを提供していると公言できる。

  31. 積極的にきょうだいに手を差し伸べること。
  32.  親や諸機関の職員は、多くの情報を与えてくれる個別教育プラン(IEP *1)、 個別家族サービスプラン(IFSP *2)、移行期のための計画に関する会議(*3)、 病院での診察に、きょうだいを(強制しないで)参加させることを考えるべき である。きょうだいは本格的な質問をよくするが、サービスプロバイダーなら この質問に答えられるだろう。さらにきょうだいは十分な情報に基づいた意見 や見解をもっており、子どものチームに好ましい影響を与えることができる。
    
    *1)IEP(Individualized Education Plans) アメリカの法律Individuals 
    with Disabilities Education Actに関連するプログラム。障害のある子ども
    にとって、最適な教育条件を整えるために、先生、親、セラピストなどが集
    まって話し合う。翻訳冊子『特別なニーズのある子どものきょうだい 特有の
    悩みと得がたい経験』の11頁も参照してください。
    *2)IFSP(Individualized Family Service Plans)。
    *3)高等学校を卒業した後のことを決める会議
    
    
  33. きょうだいとしての人生について多くを学ぶこと。
  34.  家族に関心をもつ人は、きょうだいとその心配事にも関心をもつべきである。 親とプロバイダーは、シブショップを行う、きょうだいによる公開討論会を主 催する、きょうだいによって書かれた本を読む、きょうだいについて書かれた 本について読む、といったことを通して、「きょうだいとしての人生」につい て、より多くを学ぶことができる。きょうだいによる公開討論会を催す際のガ イドブックは、きょうだい支持プロジェクトが提供しているし、シブショップ・ カリキュラム(訳注:ドン著の『Sibshops』のこと)にも載っている。きょう だいに関連した本の文献目録は、きょうだい支持プロジェクトのウェブサイト にある。

  35. 特にきょうだいのための地域プログラムを作成すること。
  36.  あなたの住んでいる地域に親のためのプログラム、あるいは同様の親を支援 するための活動があるなら、なぜ、きょうだいのために同様のものがないのか、 と問うのが公平というものだろう。親同様、きょうだいも理解し合える人たち と話をすることから得るものは大きい。シブショップや、幼年期、学童期、思 春期、成人期のためのプログラムの数は(アメリカでは)増えている。きょう だい支援プロジェクトは、200以上のシブショップやその他のきょうだいプロ グラムに関するデータベースを管理しており、地域できょうだいプログラムを 立ち上げる際の手法について支援している。

  37. 公的機関の諮問委員会にきょうだいを入れ、そして、家族に関する方針の中にもきょうだいを入れること。
  38.  委員会にきょうだいが参加するということは、ユニークで重要な観点が委員 会に加わるということであり、またその機関が兄弟姉妹の福利に関心を寄せて いることの現われともなろう。方策を立てる際、きょうだいが果たす役割が重 要であるという考えが根底にあれば、その機関の家族に関する取り組みの中に、 必ずきょうだいの関心事や貢献も含まれることとなろう。

  39. きょうだいのためのサービスに資金を提供すること。
  40.  以前に述べたように、きょうだいがほかの誰よりも長く兄弟姉妹とともに人 生を生きるだろう。−親よりも、そして間違いなくどのサービスプロバイダー よりも長く−。ほとんどのきょうだいにとって、かれらの将来と特別なニーズ のある兄弟姉妹の将来とは、否応なく絡まっている。これにも拘らず、きょう だいが生涯を通じて必要とする情報や支援を得るのを手助けするプロジェクト に、連邦政府からの資金提供はない。政府機関は、障害のある人々の幸福につ いて個人的な関心を寄せ、また親がもはや擁護できなくなったときに彼らを擁 護するであろう家族員に投資するべきである。ある女きょうだいが書いたよう に:「親が私たちのきょうだいの世話をすることができなくなったとき、私た ちはかれらの世話役になる。障害のある人々の福祉に関心をもつ者は誰でも、 私たちにも関心をもつべきである。」

きょうだい支援プロジェクトについて
 きょうだい支援プロジェクトは、障害、病気そして心の健康の問題がすべての家族員の人生に影響を及ぼすと信じ、特別なニーズのある人々のきょうだいのために、仲間に出会う機会、情報を得る機会を増やそうと努めている−また、きょうだいが抱える問題について親やプロバイダーの理解を増やそうと努めている。

 私たちの任務は、次にあげる活動によって達成される。  
  • シブショップ(若いきょうだいのための地域に密着したピア・サポートプロ グラム)の作成方法について、地域のサービス・プロバイダーを訓練する。
  • 若いきょうだいや大人になったきょうだいのためのワークショップ・メーリングリスト・ウェッブサイトを主宰する。
  • そして、ワークショップ・ウェブサイト・印刷物を通して、きょうだいの特有で、生涯続く、そして絶えず変化する悩みについて、親やプロバイダーの認識を増やす。
 1990年以来シアトルに拠点をおくきょうだい支援プロジェクトは、合衆国で唯一、600万人以上の慢性疾患、精神障害、発達障害のある人々のきょうだいの利益に捧げられている。

 シブショップ、きょうだいに関する問題、私たちのワークショップ、メーリングリスト、印刷物についての詳細は下記までご連絡ください。

きょうだい支援プロジェクト,A Kindering Center program
ディレクター ドン・マイヤー(Don Meyer)
住所 6512 23rd Ave NW #213 Seattle, WA 98117
電話 206-297-6368 FAX 509-752-6789
E-mail donmeyer@siblingsupport.org
URL http://www.siblingsupport.org

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